技術書典5 で採ったニッチな分野の生存戦略
技術書典5、お疲れ様でした。
弊ブースにお越しいただいた方、立ち読みしてくれた方、さらには購入までしていただいた方、本当にありがとうございました。 電子書籍のみながら、100部程度頒布させていただきました。
またBoothでも公開しておりますので、興味があればチェックしていただければと思います。
以下、今回の技術書典のふりかえりと、自分のとった戦略について述べさせていただきます。
リスクを抑える執筆戦略
技術書典3の時、割と華々しく散ったので、反省を生かして、ニッチ分野を執筆するときはボリュームは維持しつつ、リスクを抑える戦略で執筆しました。
具体的な方針としては次のようなものです。
- 在庫・締め切りに優しい電子書籍にする
- 宣伝活動は程々に
- 結果、ワンオペでも死なない運用になる
在庫・締め切りに優しい電子書籍にする
電子書籍にしたので、直前まで執筆できました。
日々変わる情報収集、裏取り修正などを反映することができて、最終的に記事の精度を上げることができました。
また、電子書籍にしたおかげで、印刷コストによる赤字爆死ラインの呪縛から解放されました。
それにより、高まる期待値と刷りすぎによって、そこそこ売れるのだけど、赤字なので嬉しくない、感謝の気持ちを忘れてしまう、いわゆる『誰も幸せにならない負の連鎖』に陥ることが無くなりました。
ニッチ分野で書籍を出す人にとってこれは結構大きいと思います。
宣伝活動は程々に
今回は対象の技術(今回ならVRM)を知っている・興味ある人に届けば必要十分とすると目標を定義したので、 技術者人口とその中で即売会に足を運ぶ人と考えると、50人ぐらいに届けば上出来という目標を設定しました。
全く主張しないわけではないが喧伝はせず、静かに、でもたまにはネタでふざけながら、穏やかに過ごしました。
本日の被チェック数は7!
— えむにわ (@m2wasabi) 2018年9月12日
1→7と7倍くらいに伸びてるー。もし毎日7倍になっていったら10/8にはいくつになるかな…?#技術書典 #被チェック数https://t.co/B6eEPuaPlK pic.twitter.com/pt2S69XLmc
これは完全に @mochikoさんの パクリ パロディですね。
本日の被チェック数は69!
— mochiko@10/8 技術書典5【あ-13】AWSをはじめようを頒布♡ (@mochikoAsTech) 2018年9月11日
34→69と倍くらいに伸びてるー。もし毎日倍になっていったら10/8にはいくつになるかな…?#技術書典 #被チェック数https://t.co/ojWiOxaO0L pic.twitter.com/Z29rpFN2Lz
結果、ワンオペでも死なない運用になる
ニッチ分野を扱うときは大抵孤独な闘いになるので、ワンオペは覚悟していました。
結果ワンオペでしたが、リスクを極力減らす方針により、心残りは早めのウィンドウショッピング(という名の技術書漁り)が出来なかった点のみでしょうか。
それ以外は終始穏やかに過ごせました。
電子書籍の持ち味を生かす
最初の方から電子書籍で行くことを決めたので、紙の書籍では出し得ない、電子書籍ならではの良さを出すようにコンテンツ作りを心掛けました。
- 参考文献・参照元へのリンクをこまめに張る
- スクリーンショットはカラーで、大きさも堂々と遠慮しない
- ボリュームは気にしない
- 無料体験版を事前に用意してフリーダウンロードにする
- 対面電書とダウンロードカード
今回やりたかったけど出来なかったのが以下の点です。
参考文献・参照元へのリンクをこまめに張る
紙だと、いくらいい情報を張っても、リンク先のアドレスが長かったら参照する気にもなりません。
その点、電子書籍は、リンクはクリックすればいいだけの話なので、カジュアルに外部サイトへのリンクを張っています。
情報をまとめるというのと、情報のソースをはっきりするという点では、ここは電子書籍の一番便利なことろではないでしょうか。
スクリーンショットはカラーで、大きさも堂々と遠慮しない
手順説明の記事は、本文中にスクリーンショットをふんだんに使うのですが、カラーだと絵が映えます。
というかモノクロだといまいちはっきりしない眠い絵面になることがあるのが、カラーだと見せたい絵で行けますね。
全部カラーで印刷すると、発行側が印刷代で死ぬので、遠慮なくカラーにできるのは電子書籍の同人誌の良いところだと思います。
ボリュームは気にしない
いつもの説明癖のせいで、大体50P以上になるのですが、今回は70Pでした。
電書なので4の倍数でなくても気にしないのが楽でした。
改ページを遠慮なく切れて、ページの切れ間はきれいにできました。
値付けもページ数に依存するのではなく、真に情報の価値を評価、あるいはお気持ちで設定できるのも良いところです。
無料体験版を事前に用意してフリーダウンロードにする
技術書典の3日前に、歌舞伎座Techというイベントがありました。
VRMの総本山であるバーチャルキャストの主催イベントなので、ここの参加者と対象読者層はほぼイコールです。
このイベントのハッシュタグに間に合わせて、2章を参照できる無料お試し版を無料配布しました。
バーチャルキャストの祭りがあるので
— えむにわ (@m2wasabi) 2018年10月5日
技術書典で出すVRM本の一部、アプリ紹介の部分をチラ見せします
「VRで開発した面白いものをドヤる」人達の突っ込み待ち!!
VRM FANBOOK(試食版) | えむにわブックマート https://t.co/CwrFSFp71A#技術書典5 #kbkz_tech
なお、ここでの無料ダウンロード数は4部でした。
対面電書とダウンロードカード
電子書籍のダウンロード管理の仕組みとしては、現状対面電書がデファクトスタンダードです。
ダウンロードカードの印刷は、早めの入稿ならば印刷サービスも使えるのですが、
今回はバタバタでしたので、ラクスルで名刺印刷をして、裏にシリアルラベルを張る手段を取りました。
名刺印刷はどこでもいいのですが、今回の技術書典は週明け開催だったので、名刺印刷で土日を営業日に数えてくれているラクスルさんが、生命線だった気がします。
イラストレーター用のテンプレートが配布されているので、そこから好きにレイアウトして、注意書きとトンボを非表示にしてアップロードすれば即納品です。
シリアルコードの印刷は、購入したラベルシールのお勧めに従い、ラベル屋さんを用いました。
ただし、こればっかりは失敗と言わざるを得ません…
シリアルコードが12桁なのですが、11桁で切れることがありました。
後半のラベルのずれが無視できないほど精度が悪く、印刷用紙下部20%は捨てラベルになりました。
文字列から自動でQRコードを生成出来て便利なのですが、Flashを強制させるところと、精度が低いところが、全くのゴミでした。もう使わん。
CSS組版でカラーで分かりやすいレイアウトにする
紙や印刷フォーマットに縛られないということは、全部画像にして出力だるいとか言われているCSS組版にも、遠慮なく手を出していけるということです。
今回は余裕がなくできませんでしたが、やってみたいですね。
現場での工夫
当日の現場の様子です。
後払い決済の登録忘れてたので現地でQRコードを錬成したった! pic.twitter.com/HuwY0svrxM
— えむにわ (@m2wasabi) 2018年10月8日
当日イレギュラーに工夫したのは以下の3点でした。
- タブレット端末で立ち読み可能にしておく
- フリーダウンロード版もダウンロード可能にしておく
- かんたん後払い決済を現地で登録する
タブレット端末で立ち読み可能にしておく
タブレットで電子書籍を開いた状態にしておいて、立ち読みしてもらいました。
これの効果は結構絶大で、立ち読みしたあとで購入に繋げられたのは7割程度です。悪くない。
フリーダウンロード版もダウンロード可能にしておく
こちら、フリーダウンロード版をダウンロードしてもらったのは、2件でした。
立ち読みだけで良いかなという印象です。
かんたん後払い決済を現地で登録する
執筆に追われて事前に同意事項を踏んでなかったので、当日朝、かんたん後払い決済ができませんでした。
現地で情報を記入して、ノートPCでQRコードを表示させることにより、力技で対応しました。
ふりかえり
一身上の都合ですが、色々あってメンタルをいわしてたので、執筆の進捗が芳しくなく、POPなど結局大物の印刷や工作は諦め、当日の朝まで原稿を書いていました。
脱稿したのが当日朝6時半ですから、まさにギリギリの戦いでした。
※後半4章の説明が雑になっていますので、そこは隙を見て改訂していきたい所存です。
ここはどうすればいいのか対策が思いつかないですが、仕事のトラブルと重ならないように注意しましょうというかそんなものは勝手に降ってくるものなので注意しようがないです。
まとめ
電書版のみに絞ったことで、販売ノルマに腐心することなく、感謝の念を忘れず、 本来の同人誌即売会を楽しめた気がします。
ニッチ分野からは、平常心を保てるこのスタイルを推していきたいですね。